ダニエル:で、何の話だったっけ?
コノミ:私たちがちょうど付き合い始めたときの話。サンファンに行って、カップルになったでしょ。その旅行の帰りにあなたの家に行った
ダニエル:初めて会った日の1週間後にね
コノミ:その時、もう私のことをちゃんと好きだった?ちゃんとっていうのは―――下心なくって意味で。それとも、心のどこかでは何か悪いことを考えてた?
ダニエル:(笑)オーケー。じゃあ率直に答えるよ
コノミ:私の答えは…YES。好きだったけど、めちゃくちゃ警戒してた
ダニエル:本当の意味では信頼してなかったってことね
コノミ:No no no no まったく信頼してなかった
ダニエル:僕が君の金を盗むんじゃないかとかね
コノミ:そうそうそうそう お金を盗られるんじゃないかとか、殺されるんじゃないかとか
ダニエル:可能性は0じゃないね!可能性は!
二人:(爆笑)
コノミ:初めてあなたのタクシーに乗ったときはもっとひどいよ
ダニエル:何で?
コノミ:あなたが「これは僕のタクシーだ」と言ったとき。日本でタクシードライバーっていうと、会社に所属して会社のタクシーを運転しているイメージなんだよね。バギオでみんなが個人タクシーを所有しているなんて、あの頃はまだ知らなかったから。こんな若造がタクシーを所有しているなんて、、、盗んだんか?と。その発言の直後からあなたのことを疑ってた
ダニエル:おじいちゃんが死んだばかりで誰もおじいちゃんのタクシーを使っていなかったからね。僕が後を継いでドライバーになるつもりだったけど、あの頃はちゃんとした仕事に就いていたから。でもあの日はたまたま休みだったからタクシーを運転してた―――そんな話をしたよねたしか。それが作り話だと思ったのね(笑)
コノミ:そりゃ思ったよ。しかもさ、あなたの名前が「ダニエル」だと言ったときにはもう。私にとって「ダニエル」って名前は、英語の教科書に出てくる典型的な外国人の名前なわけよ。日本で言う「田中太郎」みたいな。You know? ダニエルなんて偽名に違いないと思ったよ。それに年齢が25?26?No no no no 見た目年齢32~33だったから。偽名に年齢詐称。もう最悪よ
ダニエル:ひどい(爆笑)
コノミ:それでさ、付き合う前にタピオカ屋さんに行ったやん
ダニエル:そのときに、IDを提示させられた(笑)
コノミ:だって、タクシードライバー 兼 教師だって言うんだよ。そんな人いるか?
ダニエル:本当だったでしょ
コノミ:で、あなたが運転免許証と教員免許を見せてきたときも、「この免許証はホンモノか…?」
ダニエル:偽装を疑ってたの?!(笑)
コノミ:当たり前だよ!私は外国人なんだからどこまでも慎重にならないと
ダニエル:と言いつつカップルになった翌日にウチにきたよね。そのときはどう思ったの?
コノミ:家に行く前は、もしかしたら私はこのあと殺されるかもしれないと思ったけど(笑)
ダニエル:殺されるかもしれないのによくきたな(笑)
コノミ:その時はその時かなってその時は思った
ダニエル:クレイジーだ(笑)
コノミ:これは本心だけど、あなたのお母さん、おばあちゃん、妹たちはとてもいい人たちだと思った。歓迎されていると感じたし、危険を感じなかったよ
ダニエル:で、僕のことを100%信頼したのはいつなわけ?
コノミ:え~!?いつだろうね!??
ダニエル:今も信頼してないんじゃない?(笑)
コノミ:いやいやいやいや さすがに今は信頼してるよ(笑)いつだろうね。あ~…でも、あなたが初めて日本にきたときはまだ心のどこかでは警戒してたわ(笑)
ダニエル:付き合って4ヶ月くらいのとき
コノミ:そう。 「とりあえずウチの両親に会ってみなよ」と言って日本に招待したんだよね
ダニエル:今思えばすごい展開だね
コノミ:これは初めて話すけど、じつはあなたが来る前に、私の部屋に置いてたお金は全部隠した(笑)
ダニエル:(爆笑)Oh my god!僕がお金を盗ると思ってたの?
コノミ:どこまでも慎重にならないと!
コノミ:私ばかり話してずるい。ダニエルはどうなの?最初から下心なく私のことを好きだった?
ダニエル:この話はもう何度もしてるけど、初めて君がタクシーに乗客として乗ってきたときは、この観光客にバギオツアーを提案して追加料金をもらおうと思ってたよ。でも「ランチに行きたいだけだからいらん」ってあっさり断られたから諦めた。君からお金を取ろうという選択肢はあの時を最後に僕の中から消えた
コノミ:本当??!!!
ダニエル:僕は17のときからタクシーを運転してきたけど、乗客と友達になったのはコノミ含めて二人だけ
コノミ:そうなの!??!
ダニエル:当たり前だよ(笑)タクシードライバーにとって乗客は乗客以上でも以下でもないから。正直、コノミがタクシーに乗ってきたとき、僕が君に会うのは今日が最初で最後だと思ってたよ
コノミ:私は、あのとき 「フィリピン人の現地人の友達ゲット!ラッキー!」 って気持ちだった
ダニエル:この先もう会わない人に何を話したって失うものはない。だから僕は家族のこと、仕事のこと、何でも話したんだよ
コノミ:そうだったのか…