3月下旬。
夫が「初任給」をゲットした。
日本で初めてのお給料、おめでとう!🥰🎉 pic.twitter.com/MIx1GBBMPJ
— コノミ🇵🇭バギオ時々イフガオ (@knm_pinas) March 26, 2022
夫名義の銀行口座は用意が間に合わず、とりあえず私の口座に振り込んでもらった。
翌月払いなので、締日からさらに一ヶ月待たないといけないのはとてももどかしくて、最後の一週間はワクワクしながら指折り数えた。
初めての給料を手にして、当の本人は意外にも浮かない様子だったけど、ここまでくるのに本当に沢山の人のお世話になったし、何より両親にはこの歳になって尚心配と苦労をかけっぱなしということもあり、妻の私としてはグッとくるものがある。
そりゃ同年代の日本男児と比べたら十分な金額とは言えないけど、大変な思いをして日本に来て右も左も分からないはじめての環境で一生懸命働いて初めて得たお金なんだから、今日くらい喜んでいいんだよ(と、自分に言い聞かせる)。
夫の仕事が始まった頃、初任給の使い道について話したことがあった。
フィリピン人の夫にとってはカラオケ館のようにビル全体がカラオケ店になっているのが珍しいらしく、初めてこれを見たときは「信じられない!」と言いながら相当ウケていた。
…日本人の私からしたらあんたの国のカラオケの方がよっぽど面白いけどな。
▲バギオSMモールゲームセンター内で民衆に見守られながら一人カラオケを楽しむ人
だから、てっきり私はカラオケに行くのかと思って、自分の手帳の給料日翌日にはしっかり「カラオケ」と記入していたし、さすがに娘は連れていけないから三時間だけ両親に見てもらおうかとか、色々考えていた。
ところが、いざ当日になって夫に改めて使い道を聞くと、全く違う答えが返ってきた。
なるほど、DIYね。いいねー楽しそう!
早速最寄りのホームセンターに行こうとすると、夫にマテマテそうじゃないと止められる。
「ホームセンターは高いでしょ?木がいっぱいあるところを知ってる。あそこなら安く木を分けてもらえるはず」
夫はずば抜けた観察力に加えて土地勘もあるので、私の地元のことを私以上に知っている。
私もバギオにいた頃は市場の排水溝の中のドブネズミの数をかぞえて夫に驚かれたから、外国に行けばみんなそうなのかもしれないけど。
現地に行く前に一応Google Mapで確認すると、地元の建設会社だった。
木造住宅メインで、じつはうちの実家も数年前にリフォームでお世話になったところだ。
夫は初めてのことにトライするとき、口癖のように「Trust me(僕を信じろ)」と言う。アラジンみたいだ。
そしてこういう時、夫は必ず少年のようにキラキラした目をしている。
でもごめん、ジャスミン姫のように「いいわ」とは言えないよ。建設会社で木を分けてもらうって聞いたことないから。笑
それでも絶対大丈夫だからと言い張る夫に根負けして、じゃあ行ってみるだけならと、とりあえず行ってみた。
普段から車で前を通ることはあっても、中まで入るのは初めて。
夫の言うとおり、小さなオフィスに隣接する作業場に、サンプルの木やすでに受注済みと思われる制作中の木がたくさん置いてあった。ヒノキのいい香りが充満している。
「ねえ、入っていいの?」
「触らないでよ!見るだけね」
「ねえ、やっぱり無理だよ。帰ろう」
ここにきてなお私がモジモジしているうちに、オフィスから優しそうなおじさんが出てきて声をかけてくれた。会社のお偉いさんっぽい。
おじさん「何かお探しですか?」
ダニエル「あのぅ、木がほしですね」
私「唐突だな」
おじさん「これから家を建てるんですか?」
ダニエル「ちがいます、テーブルをつくりたいだから。」
おじさん「テーブルですか。」
そういうと、いきなり来て木を分けてくれと言った非常識極まりない私たちを作業場の中に通してくれた。
「ここにあるのはすべてヒノキやスギなどの針葉樹で、柱など家の材料に多く使われるんですね。針葉樹は柔らかいので、テーブルを作るのには適していません。ほら、爪で押すと跡がつくでしょう。テーブルを作るのなら広葉樹がいいですよ。今はネットとかで買えますから」
ふ~ん、そうなんだ。勉強になった。
とりあえずここでは木は手に入らないということね。
おじさん「お店かなにかやられるんですか?」
ダニエル「いや、家でコーヒー飲みますからw」
おじさん「ええ、家で?でも専用の機械がないと・・・まさかノコギリでギコギコ切るなんて言ったら大変なことですよ」
ありがとう、おじさん(涙)でもね、この人、そのまさかなんです。
数秒でスパーンと切れる機械より、一日かけてノコギリでギコギコしたいんですわ。。。笑
おじさんにはネット購入を勧められたけど、実物を見て触って決めたいという本人の希望でホームセンターに向かった。
木は手に入らなかったのに、夫はなぜか誇らしげにしている。
でも思い出した。だからこの人といると面白いんだった。
いつも突拍子もないことを言い出して、無理だよ~と怖気づく私を無理やり連れて行っては、新しいことを体験させてくれる。
バギオで初めて一人でジプニーに乗ったときも、
イフガオで高い高い崖から飛び込んだときも、
やる前はすごくすごく怖かったのに、やってみたらもう何でもできるような気になった。
今回も、おじさんが優しかったし、木について少し知れたので、めちゃくちゃ得した気分だ。
この日は一時間近くホームセンターで木を吟味して、最終的に5本(?)購入して帰宅。
休みが来るたびに、父親が学生時代に使っていた工具を持ち出しては玄関先でテーブル制作に勤しむ夫。
丁度一ヶ月後、我が家のテーブルが完成した。
「なにか描いてほしい」と夫からリクエストされて一週間悩んだ末、娘が大好きな動物を詰め込んだ。
え~決められないよ。何がいいと思う?と聞いても
妻が好きなように自由に描くんだよ!っていう。
私はいつも夫になにかお願いするとき、夫の好きなようにと言いつつ ついつい口を出しがちだけど、夫は本当に何も言わず私の好きなようにやらせてくれる。
「大丈夫だよ、思うようにやってごらん」
だから、緊張するけどのびのびできて、結果良いものが完成することがこれまでもよくあった。
バギオでは中高生の先生をやっていた夫。退職してしばらく経った今でも生徒や保護者から慕われて、頻繁に食事に誘われている理由が分かるような気がする。
そんなことを想いながら穏やかな気持ちで描いたら、下書きなしの割には意外とうまく描けた。
「私才能あるかも?こういう仕事しようかなw」
すぐ調子に乗る。
夫の要素もいれたくて、PAPA MAMA 娘の名前 は夫に描いてもらった。
そしてヤシの木の葉っぱには家族三人の手形を。
もう少し娘が大きくなったら、晴れの日のティータイムに活躍しそう。
ということで、次回は家族でしまむら編になりそうです。