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フィリピン人夫の外免切替 ~負けられない戦い~

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外国の運転免許を日本の運転免許に切り替える「外免切替」の手続きが難航している。

本文に入るまえに、これまでの経緯を説明しておきたい。

前回までの話

2022.1.24 事前審査(書類)〜1st try〜

1日限定10名の審査枠に滑り込むも書類不備で不可。

【ミッション】
フィリピンにて次の二つの追加書類を取得し、再度事前審査に挑む

①出入国記録(Certification of List of Travel Record)
②運転免許の経歴証明書(Certification of License)

※夫の場合は、免許証の再発行をしたため免許取得時のオフィシャルレシートがなく、さらに再発行が来日直前という最悪なタイミングだったため、上記のような追加書類の提出を求められた


追加書類の取得をマニラにいる前職の同僚に依頼。快く引き受けてくれるも着手金の3500ペソを送金後にパタリと連絡が途絶える(三ヶ月後、手続きはしてもらえないことになりお金は返ってきた)


一度しか会ったことのない疎遠なマニラの従兄弟に図々しく手続きを依頼し快諾される


従兄弟、一つ目の書類を易々と取得


二つ目の書類の発行のため、夫が在東京フィリピン大使館にて委任状に公証をもらう


委任状をフィリピンへ郵送


・従兄弟が(なぜかこのタイミングで)財布を落とし所持金ゼロへ
・従兄弟が(なぜかこのタイミングで)インフルエンザで1週間寝込む
・従兄弟がワクチンパスポート不所持でLTOに入れず門前払い

…という不毛な一ヶ月を経て


委任状を持って従兄弟が二つ目の書類を取得


二つの追加書類を日本に郵送してもらう


〜2nd try〜

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外免切替は心理戦

2022年12月26日。
忘れもしない、娘2歳の誕生日だ。

朝5時前。
バースデーガールを両親に預け、突き刺すような寒さの中で私たちは始発の電車を待っていた。

外免切替手続きの受付時間は平日朝9:30〜10:00だが、先着順ですぐに枠が埋まるので、8時の開門と同時に着くのでは遅いのだ。

夫のパスモが残高不足で引っかかりヒヤヒヤしたが、前回より早い開門前に到着した。すでに私たちの前にできた50〜60人の列は、警備員によってきちっと整備されている。

30分以上外で待機したあと、ようやく門が開いた。
建物の中に入ると、外免切替は左に回って列をつくる。

前回はあまり感じなかったが、2度目の今回は周りをみる余裕があった。

外免切替ではいつも、ぞんざいに扱われているように感じる。職員はなぜか最初からタメ口だし、整列時に一歩でも列からはみ出ようものなら怒鳴られる。

「切替?うしろ。」
「一列に並んで!」
「だから列からはみ出さないでって言ってるでしょう!」

まあ、ただでさえ言葉が通じない相手にこのくらい言わないと現場が回らないというのは、普段夫と暮らしている私には十分に理解できるのだけど。日本人である私は、相手の言葉の意味やニュアンスがすべてわかってしまうから嫌な気持ちになるけれど、肝心な彼らには全く伝わっていない。

口を開けば怒られるので、小声で淡々と夫に通訳する。

カルガモ親子のお散歩のように行儀よく列をなして二階へ移動し、パイプ椅子に詰めて座る。

時刻は8時前。

「9時25分から説明を開始します。」

前回と同じく、ここから一時間半後に受付が開始する。外免切替は、先着10名ほどしか受付枠がないため、それまでは自分が今日審査を受けられるのかどうかさえもわからないのだ。

空白の一時間半。先に番号札だけ配ってくれれば、枠からはみ出た人は帰れるのだけど。

そんなことを考えながら席について、ふと目の前の貼紙に目をやった。

[2022年6月1日から、事前審査の受付時間は午前中のみになります。]

前回きたときは、午前中の枠に漏れてしまった人は午後にもう一度チャンスがあった。

今後は午前中の一度のみになるという。だから前回よりこんなに人が殺到しているのだ。公式サイトには案内があったのだろうか、完全なリサーチ不足だ。

それにしても平日の朝30分のみの受付、先着10数名の枠に人が殺到。あまりにも狭き門だ。

9:25ちょうどに受付に関する説明が始まった。

その後、番号札を配るのに壁に沿って一列に並ばされるのだが、左肩を壁につけないと、通行の妨げになると注意される。少し離れるのもダメ。

一人、待っているあいだに椅子の上で眠ってしまった人がいた。全員が立ち上がって整列してもまだ寝続けている。

ひとりの職員が半ば呆れながら「いいんですか?」と声をかけて起こそうと伸ばした手を、後からきたべつの職員が「いい」と止めた。

書類審査は全て日本語で行われるので、日本語のできない人は通訳者がいなければ審査が受けられないことになっているが、寝ている彼は一人だった。日本語が堪能なのだろう。

前から3番目だった彼は、結局誰にも起こされることなくそのままゲームオーバー。一瞬の気の緩みが命取りになる。

「可哀想。起こしてあげたらいいのに」

声をひそめて夫に話しかける。

「きっとあの人、クリスマスプレゼントもらえなかったんだよ」

だからずっとカリカリしてるんだ、と夫がつぶやくように言った。

外免切替では、こんな光景を目にすることになるので気疲れがひどいのだ。何としてでも今日で終わらせたい。

 

初めて審査を受ける人と、二回目以降の人と、色の違う番号札が配られた。

早起きした甲斐あり、私たちは二回目以降の「2」の番号札をゲットした。

衝撃の事実

30分も待たずに私たちの順番がきた。

すぐ先にある「外免切替相談室」という部屋に4組まで入れるスペースがあり、そこで書類審査が行われる。

前回の担当者は若い女性だった。新人なのか、両隣の職員に都度聞きながら慣れない手つきで私たちの書類を確認していて不安になったのをよく覚えている。

今度はベテラン風の男性だ。

私たちは、11ヶ月かけてようやく手に入れた2つの追加書類を目の前に並べた。

言われたものをきちんとした手順で用意して持ってきたのだから堂々としていればよいのだが、この犯罪者の取り調べのような雰囲気にはどうも慣れない。

担当者はこれまでの経緯などしらない。ただ私たちが持ってきた書類と、前回の担当者が残したメモを頼りに今回の審査をおこなう。

どうも話が通じない。

お互いに違和感をもったまま並行線で10分くらいが経過しただろうか。

コノミ
コノミ
つまり、そもそも私たちが持ってきたこの書類が別物だということですか?
職員
職員
そうです

何かおかしいと思ったら、なんとこちらが用意した2つの書類のうち1つが求められていた物と違うと言うのだ。

そんなことはない、前回「Certificate of license」をとってくるようにとそちらに言われたのだと主張すると、衝撃の事実が発覚した。

実際に必要となる書類は「Certificate of license history」で、私たちが一年かけて取得した「Certificate of license」とは全く異なるものだというのだ。

そんな…

私たちの聞き取りミスか、フィリピン側の発行ミスだと思った。

帰り道、涙する夫をしょうがないね、と励ましながら帰った。

しかし、帰宅して前回の担当者が書いたメモをみるとたしかに「次回:Certificate of license」と書いてあり、あちらのミスだったということが判明。

普段穏やかな夫もこれには激怒してクレームを入れると言ったが、「電話でクレームを入れたところで取り合ってもらえない。仮に向こうのミスだとしても必要書類が免除されることはないし、あの様子だと謝られることもない」と返した。

国家権力を前に打つ手なし、なのだ。

夫はその日、部屋にこもって出てこなかった。

夫には申し訳ないが、正直「文句を言うといっても、その電話するの私だしな」と、内心は思っていた。

新たなミッション

こうして、私たちに新たなミッションが与えられた。

新ミッション:「Certificate of license history」を入手

これは家族の手を借りて2ヶ月で難なく(いや、難はあった)クリア。以下、経緯だ。

バギオにいる義妹にLTOでの手続きを依頼。


一度目。「とってきたよ、クヤ」
発行された書類を確認すると、必要事項が記載されていない。やり直し


二度目。
ドレスコード違反で門前払い(公的機関はサンダル、短パン禁止)


三度目。
義妹から義母にバトンタッチ。書類に追加項目の記載を求めるも、そのような書類はうちにはないの一点張り


夫がLTOにメール。書類が必要となった経緯を説明し、書類のサンプル画像を送る


メールを送ってから二週間、音沙汰なし


ようやく返信がくる。一転、書類を発行できるとのこと。その後すぐ、無事に発行された


3月初旬、フィリピンから書類が届く


夫がアキレス腱断裂

夫が入院しました。 夫が入院した。 診断名は、「アキレス腱断裂」。 事件が起こったのは先週の土曜日。 職場の先生方が立ち上げたフッ...

順調だ。順調すぎる。

異国での生活など、これくらいのスパイスがあった方がいいのだ(と、言い聞かせる)。

これには夫も何も言えるはずがなく、また数ヶ月間、免許問題は先延ばしということになった。

負けられない戦い

ちなみに一度の審査にかかるコストは、交通費だけで片道二人で6000円。時間にしてドアtoドアで往復4時間以上、待ち時間や実際の審査時間も含めると丸一日かかる。

書類審査は日本語ができないと受け付けてもらえないため、通訳人の同行は必須なのだ。そのたびに夫婦で有給をとり、娘は両親に預け朝5時前に家を出る。

こんなことを繰り返していたら、最初からおとなしく自動車学校に通って日本の免許を取得したほうが安くすむかもしれない。

そんな事態は絶対に避けるべく、夫にはさっさと怪我を治してもらい最短ルートで手続きを完了したいと願うばかりだ。