2023年5月。
夫が歩けるようになり、
朝4時半に家を出た。始発もまだないので、
外免切替ベテラン勢
フィリピン人夫の外免切替。
外国運転免許を日本運転免許に切り替えるこの手続きでは、
夫が最初に免許センターに行ってからすでに1年4ヶ月が経とうと
今回が3度目の挑戦。
思わず「二度あることは三度ある」
夫の今の仕事も、同じ会社の採用試験を2度落ち
そんな過去の経験を御守り代わりに、
午前7時前、最寄駅に到着した。
免許センターまでは徒歩20分の距離。
バスが出るのはちょうど20分後だ。
手続きの枠は先着順ですぐに埋まるので、
一刻を争う事態でまさかの5分ロス。
このセリフを伝えるために「呪う=curse」
3月に切ったアキレス腱が完治していない夫を置き去りにして、
免許センター目前というところで、朝7時に夫に呪いをかけながら
2年前、夫が日本に来てはじめて仕事の面接に応募したとき。
夫と日本に住んでいると、何かと全力疾走なのだ。
7時18分、免許センターに到着した。
前に並んでいる人数をざっとかぞえる。前回は60番くらいだった
免許更新にきた人、
7時45分。建物のドアが開き中に入れられた。
入り口をはいったら左手に回り列をつくり、2階へ移動する。
前回は年末でごった返していたからか職員がひどく苛立っていたが
「9時25分から説明を始めます。
“いつもの人”から、恒例の一時間半待ちを宣告される。
さすがに3回目ともなると、次に何が始まるか、
大半は、ここにくるのがはじめてもしくはせいぜい2回目の人たち
するとしばらく席を立っていた夫が戻ってきて言った。
「技能試験に5回落ちて今日が6度目のケニア人と話してきたよ!
幸運のカード
9時25分、いつもどおり一分のずれもなく受付が開始した。
職員「今から受付をします。前から順番に聞いていきますから、
前回までは一人ずつ窓口へ歩いていき口頭で電話番号を伝えていたが、
夫が「12」の番号札を受け取ったところで、
「あなたは?」
そう答えると、当然のように無視された。おそらく、日本語が流暢なフィリピン人だと思われたのだろう。前回は私が日本人だとわかると”ですます調”に切り替えていた。
それから、彼は大きな声で私たちの以降に並んでいる人たちに向かってアナウンス
「午前中の審査は12番までです。13番以降の人は午後14時か
午前中の審査は「12番」まで。夫が受け取った番号だ。
もう運が味方についているとしか思えない。
何人か、残念そうに帰って行った。
すぐに「外免切替相談室」というところで書類審査が始まった。
申請者一人に対し職員一人がつく。一度に4組まで部屋に入れるの
待つこと一時間。
今度こそ大丈夫という自信と、
どこから湧き出てくるのか、
大学受験以来の頻尿ぶりだ。
胃はキリキリと痛み、吐き気すらしてきた。
そんな極限状態の私の隣で、
互いに幸運を祈り合った。
長期戦
「12番の方〜」
8回目のトイレから帰ってきた頃、ついに私たちが呼ばれた。
1度目、2度目のときとは違う、見たことのない職員だ。
私たちの場合かなり事情が複雑で、
ひと通り書類に目を通したあと「ちょっとお待ちください」
夫が話しかけてきたがなにも耳に入ってこない。隣では、
5分以上待ったあと、ようやく職員が書類を抱えて帰ってきた。
職員「はい。じゃあこれで書類は大丈夫ですから。
二人「「通った……….!!!!!」」
嬉しさを抑えきれない夫が思わず低めにガッツポーズをして私のほ
日本人妻の勘というのか、
職員「ではまず日程を抑えますからね。いつがいいですか?9月6日以
二人「「く、9月…?」」
職員「はい。それまでは全部埋まってます」
次なる試練
つまり、今後の流れはこうだ。
9月
視力検査後、10問の学科試験が英語で行われる。7問正解で合格
合格すれば、技能試験。
それも合格すれば、その日のうちに免許取得となる。
「技能試験に落ちたらまた試験を受けてもらいますが、
何としても一発合格してもらわねばならない。
職員「マニュアルとオートマどちらにしますか?」
ダニエル「マニュアルです!」
即答する夫に、職員がこう続けた。
「奥さんはわかると思うけど、マニュアルだと、
もうこれ以上の失敗は許されないと思っている日本人妻からすれば
「OK。マニュアルです!」
一切迷いのない、少年のような真っ直ぐな瞳でこう言うのだ。
ダニエル「これは新たな挑戦だよ、妻」
コノミ「ここにきてリスクをとる意味がわからないけど… もう好き
「あのとき夫婦喧嘩をしてでもオートマにさせておけばよかった」
残り時間
最後に、気になっていたことを聞いてみた。
「あのー、夫が今持っているフィリピン免許が来年の2月で切れる
説明を終え、
・フィリピン免許が切れる前に、
・フィリピンに帰って免許を更新したら、
つまり、
選択肢は、2月の有効期限までに試験に合格するのみなのだ。
なんというタイミング。
せめて免許の有効期限があと二年先ということなら、
まだ移住して間もないんだ、
とりあえず試験が行われる9月までは、やれることは少ない。
私たちが部屋から出ると、さっき夫と話していたダバオ出身の彼もちょうど審査を終えて出てきたところだった。彼の表情をみれば、結果は聞くまでもなかった。
「なんでダメだったの?」
「この免許は古いタイプだから受け付けてもらえないらしい。フィリピンに帰って免許を新しいタイプに変えてこいと言われた」
夫曰く、現行のフィリピン免許には、免許番号が数字から始まる旧タイプと、アルファベットから始まる新タイプの二種類あり、外免切替の際には旧タイプの免許証は認められないというのだ。フィリピン国内ではどちらも問題なく認められているというのに。
ダバオくん以外にも、うなだれたり、持ってきた書類を椅子に叩きつけて悔しがったりする人々。そんな彼らを横目に「3度目までは、がんばれ。そのあとは…なるようになるさ」と先輩風を吹かせ、今までにない爽やかな気持ちで免許センターを後にした。
帰り道、勝利の笑いが止まらなかった。あんなこともあったよねと、これまでの経緯を夫と振り返っていて、私は感情的になると英語が流暢になるというのを発見した。
書類審査を通しての疲れと、朝からの緊張が解けて、
その後、