フィリピンの楽しみの一つといえば、安い・早い・美味いの三拍子が揃った種類豊富なストリートフード。
ここバギオでも、ストリートフードは学生の空腹の強い味方であるだけでなく、人々の生活を支える大切な文化として根強く人気で、一番安いもので5ペソ(約10円)から楽しめます。
中でもその見た目のインパクトから特に観光客の目を引くのが、この記事で紹介するバロット。孵化寸前のアヒルの卵を加熱したゆで卵です。
フィリピンを訪れた際には怖いもの見たさに食べてみよう!という人も多く、「フィリピン バロット」で検索すれば「実食!フィリピンの珍味・バロットを食べてみた」系のブログやYouTubeが出てくる、出てくる。
本記事は、2018年に私が人生初のバロットに挑戦し、そして 結局食べられなかった という話ですが、その前にバロットの予備知識を簡単にまとめておきます。
Contents
バロットとは
バロットまたはバロッ(タガログ語: balut)とは、孵化直前のアヒルの卵を加熱したゆで卵である。フィリピン以外にも中国本土南部から東南アジアの広い地域で食され、ベトナムではチュヴィロン (ベトナム語: trứng vịt lộn/孵) またはホヴィロン (hột vịt lộn/核孵) 、カンボジアではポンティアコーン(クメール語: ពងទាកូន)、中国では毛蛋 (拼音: máodàn, マオタン) 、死胎蛋 (拼音: sǐtāidàn, スータイタン)、鴨仔蛋(広東語 aap2zai2daan2, アープザイダーン)などと呼ばれる。引用:Wikipedia
孵化直前の卵を茹でて食べるので雛鳥の姿がある程度完成しており、日数によってはすでに羽根が形成されているものもあります。
フィリピンではお酢と塩をかけて手で持って豪快にいただくのが一般的ですが、知り合いのベトナム人ハーフ Oかだ君によれば、
「毎年お正月には親戚から大量のバロットが送られてくる。スプーンでぐっちゃぐちゃに混ぜて食べるよ」
だそう。国や家庭によって食べ方は様々なようですね。
フィリピン人はみんなバロット大好き!は間違い
フィリピンといったらバロット!
フィリピン人はみんなバロットだいすき!
みたいな記事がたまにありますが、実際は全然そんなことないです。
少なくとも私の周りのフィリピン人は、バロット嫌い or 食べたことない という人がわんさかいます(20代女性が中心かな)。中には、「あんなもの罰ゲームか酔っぱらって味がわからなくなったときにしか食べないよ」と言う人も。
世代や性別、地域性も関係するのかもしれませんが、バギオで私が話した感じだと中年以上の男性がバロットを好む傾向にあり、若い世代は男女共にバロット嫌いが多くいましたね。
ここから本題に入りますが、一部グロ画像あります。苦手な方は、途中目を細めて見てください。
バロットに真っ向から挑むも惨敗した話
出逢いは突然に
それは、2018年も末、バギオに語学留学していたときのこと。
友人と焼肉屋で夕飯を食べたあと、私以外はバーへ移動。
絶賛体調不良だった私は、一人タクシーで先に帰宅した(三ヶ月の留学期間のうち、一ヶ月は排気ガスが原因の咳喘息に苦しんでまともに会話もできなかった)。
タクシーの運ちゃん(名前はOliという)と仲良くなって、バロット食べてみたいんだよねー と話をしていた。
すると、中心地から離れた静かな通りに どこからともなくバロット売りの小さな屋台が、暗闇にポツンと出現したのだ。
(これは・・・引き寄せの法則?)
Oliが道路の脇に車を止めてくれて、タクシーの窓から顔を出して購入。
ひとつ15ペソだった。
恐怖の始まり
ついに念願のバロットを手にした ローカルフードファイター(自称)の私は、ワクワクが最高潮に達していた。
これはフィリピン初心者あるあるで、バロットを食わずしてフィリピンは語れないと思ってしまう のだ(実際バロットを食べたところで語れることは、バロット食べたよーってことだけ)。
校門の前でOliとさよならしたあと、私とバロットは二人で夜の寮へ。
「ついに実食・・・!」
と思ったのも束の間、ここにきて私の心境に変化が。
人間、一人静かな部屋にいると急に冷静になるらしい。
深夜に異国の地で孵化直前のアヒルの卵を一人で手に持っている というシュールすぎる状況を把握。
バロットを買った直後のワクワクしていた気持ちはいつしか恐怖心に変わり、鼓動が早くなるのを感じた。
しかも、ここで私はあることに気付いてしまったのだ。
調味料がない。
時間は深夜0時を回っていた。ここはフィリピンの山奥・バギオの語学学校。
通常バロットはお酢か塩をぶっかけていただくと聞いていたのに、私の部屋には調味料がないのだ。
寮の食堂は閉まっているし、当然スタッフも帰宅している。
厨房にいけばお酢も塩も拝借できそうだけど、暗闇の厨房でイピスなんかに遭遇したらこの世の終わりだ。(注:イピス=タガログ語でGのこと)
そもそもここは3Fで食堂は地下1F。エレベーターは故障中。
隣の部屋に住む中国人の友人は寝ているかもしれないし、深夜に叩き起こすほどの仲でもない。だからと言って明日まで孵化直前のひな鳥が入った卵と鍵のかかった部屋で過ごすのは気味が悪くて無理。
切望してやっと手に入れたものが、時間がたつにつれて得体の知れない気持ち悪いものに思えてきた。
勝者、雛鳥
部屋にあった唯一の調味料「おとなのふりかけ」を複数、それに入学初日のオリエンテーションで配られて冷蔵庫に冷やしておいた缶ジュースと、何かあったときのために(?)ビニール袋を用意。
今、私にできる最大限のことはした。
意を決して、殻を割っていく。
・・・
・・・
!?!?!?!?!?!?
想像していたよりも大きな頭が出てきた。
もう一度見てみよう。
・・・
?????完成している?????
この時点でもう一度、自分が今置かれている状況を整理してみた。
・深夜0時過ぎのフィリピン
・山奥のバギオの語学学校
・助けを求められるスタッフは既に帰宅
・手には生温かい孵化直前のアヒル(ほぼ完成形)
仮に食べられたとしても、お酢も塩もない。美味しくないに決まっている。
はて、雛鳥の味とは・・・(震)
食べてみたいという好奇心はあるものの、気味の悪い卵から少しでも離れるため、それを持った腕を最大限に延ばした格好のままあっという間に30分が経過。
↑本当にこのまま30分が経っていた。
結局、恐怖に打ち勝てず食べられなかった。
以前誰かが「スープはおいしいよ!」と言っていたのを思い出して、顔を近づけてスープだけ舐めたけど、たしかに美味しかった。
【考察】バロットを食べたければ環境を整えよ
以上が、フィリピンの珍味・バロットに挑むも惨敗した話でした。
私に言わせれば、今回の敗因は100%環境にあったと言っても過言ではありません。
・見知らぬ土地
・孵化寸前のアヒルと密室に二人きり
・新しいことにチャレンジするのに向かない深夜という時間帯
・何かあったときに助けを求められる人がいない
バロットを食べるのに最悪な条件しか揃っていなかったので。
もしもこれが、
・住み慣れた地元で
・気を許した友人と一緒に
・よく晴れて気持ちも前向きになる真昼間
・外のひらけた場所で(何かあったら(?)すぐに走って逃げられる)
だったら120%イケましたね。
このことから、バロットを食べる際はまず環境から整え、よい精神状態で挑むことが望ましい ということがわかりました。
この一週間後に再度バロットに挑戦し、おいしくいただいた話というのが続編になります。