フィリピンに恋して。
~フィリピン・バギオのリアルライフ~
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タイから来た友達。

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毎日ネタが豊富で忙しい。

お金はないけど面白い人生で本当に幸せだ。それに尽きる。

 

帰り道、いつものように夫にいまどこかと聞いたら

“I met new friends.”

とだけ返ってきた。その一文で大体予想がつくからワクワクが止まらない。

スキップしながら駅の改札を出ると、夫が2人の見知らぬフィリピン人と仲良くカフェでコーヒーを飲んでいた。

二人は近くの日本語学校のクラスメイトで、一年間日本語を学び、つい先日企業の面接を受けて結果待ちだそうだ。

それぞれラグーナ、ダバオ出身の20代くらいの若者。昔から日本が大好きだというラグーナ出身のアイバンは、日本人妻の登場に大喜びで「日本語勉強したいです!よろしくお願いします!」と夫を押しのけて挨拶してくれた。

私も同席してじっくり話したかったけれど、あいにく娘を保育園に迎えにいかなければならなかったため、近所だしまたご飯でも行こうと言って別れた。

初めて会った人とまるで昔からの知り合いのように話し込みそのまま友達になってしまうのは、フィリピンではよくあることだと思っていたが、夫を見ている限りそうではないらしい。日本にいてもこうしてどんどん新しい友達を引き連れてくる。完全に個人の性格によるものだ。

Facebookでアカウントを交換したきり次がない人も中にはいる。でもそれでいい。ご縁があればまた会えるし、ご縁がなくてもその共有してひとときが双方にとって楽しい思い出となればそれでいいのだ。

 

その夜、夫のスマホが鳴り1通のメッセージが届いた。

送信者はタイ人のノン。

夫とノンの出会いは、昨年12月だった。

普段から口を開けばマッサージ屋に行きたいと言っていた夫。私の気が向くのを待っていたら二人とも定年を迎えてしまう(私もマッサージには行きたいけどいつも優先順位で負ける)と、痺れを切らして一人で出掛けて行った。

Googleマップでヒットした、その周辺では一番クチコミの良いタイ式マッサージ屋に行った。

そのサロンは小さな雑居ビルの2階にあった。

「すみません、今から行ってもいいですか?」

と店のドアの前で電話をかけ、電話を切った数秒後に店に入っていき受付の女性を驚かせた。掴みはオーケー(?)。

初めてのタイ式マッサージは夫の疲れた身体にとてもよく効いたが、それ以上にセラピストとの話が盛り上がってしまった。

このセラピストこそがノンだった。

(あとで聞いた話、彼のタイ式マッサージでは施術に集中するため客とは喋らないというポリシーがあるらしい。笑)

お互いに東南アジア出身、偶然にも来日した時期がほとんど同じということで、話題はもっぱら現在に至るまでの経緯や、日本での仕事のことに及んだ。

ノンには日本人の奥さんと小学生の息子がいる。結婚後、しばらくタイで過ごしていたが、奥さんの希望で2年ほど前に日本に移住したらしい。

バリバリと働く奥さんの傍ら、就職活動が難航していたノンはマッサージ屋を開業。しかしマッサージ屋の収入は安定しない。このまま仕事が見つからなければタイに戻らなければいけない、と話した。

しばらく彼の話に耳を傾けていた夫が率直に質問した。

「ところで英語がとても流暢だけど、英語の先生になることは考えないの?」

「考えたよ。でもダメだった」

「何社くらい受けたの?」

「1社だよ」

「1社?!それで諦めるのは勿体なさすぎる。応募先は山程あるよ!」

それから夫は、自分が来日前から来日後にかけて20〜30社の英会話教師・ALTの仕事に応募したこと、その中で1社を除いてすべての選考に落ちたこと、同じ会社に複数回応募したこと(今の就職先は3度目の正直で採用された)などの実体験を話し、それからノンにハローワークを活用することを薦めた。

あっという間に1時間半の全身マッサージコースが終了。

「話に夢中になりすぎて首〜頭のマッサージをするのをすっかり忘れてたよ。お詫びにそこのバーでご馳走させてくれないか?」

その日、「I met a new friend.」と言って夕飯をドタキャンした夫が夜遅くに泥酔して帰ってきたのは言うまでもない。

 

夫とノンのやり取りはその後も続いた。

ノンは、夫が紹介したフィリピン人講師陣が運営するALTセミナーに参加。
(*ALT…Assistant Language Teacher 外国語が母語である外国語指導助手のこと。小中学校・高等学校へ、各教育委員会から配置される)

このセミナーは夫も今の仕事に就く前に受講したもので、受講料は2万円。日本の小中学校でALTとして働くためのノウハウや、応募から採用までの具体的なプロセスを、現役のフィリピン人講師から学ぶことができる。スタッフ・参加メンバーは全員フィリピン人なので、開催日はコロコロ変わるし開催時間は大幅に遅れる。

当時、貯金ゼロの夫が工場労働で得たわずかな収入で2万円のセミナーに参加すると言ったときは全力で止めかけたが、「もう好きにやってよ」と放っておいたら思いのほかとても有意義だったらしく、実際の面接でも役に立ったらしい。あのとき夫がセミナーに行くのを止めなかった自分を褒めたい。

面白いのが、このセミナーを受講したのも夫が電車でたまたま”DUTY FREE(免税)”と書かれたフィリピンの手提げを持っているフィリピン人女性に話しかけたことがキッカケだということだ。

縁が縁を呼ぶ、とはまさにこのことだろう。

またあるときは、夫とノンが夜な夜な二人でテレビ電話をしていると思ったら、翌週ALTの面接を控えたノンに夫が熱心にアドバイスをしていた。

 

ノンからのメッセージが届いたのは二人の出逢いから3ヶ月が経った頃だった。

ノン「ALTの仕事が決まった!」
ダニエル・コノミ「すごい!」

すぐにお互いの家族を連れてお祝いに行った。

私と娘は初対面だったけど、想像以上に楽しい人で、話が絶えなかった。彼が連れてきた息子もとても可愛らしくしっかりとした子だった。

ノンの就職祝いだからご馳走するつもりで値段気にせず注文していたら、会計時にこれはダニエルへのお礼だからとこちらが支払うのを頑なに拒まれ、逆にご馳走になってしまった。

その日来られなかった奥さん、話を聞く限りとても強くて優しい人なんだなと。同じ東南アジアから日本に来て奮闘する夫を支える妻として(勝手ながら)学ばせてもらった。

 

私たちの人生の物語にまた新たな登場人物が一人加わった。

これで夫が日本に来てから仕事以外で新しくできた友達は10人を超えた。大体月1ペースで知らない人と仲良くなっている計算だ。

フィリピン人、イギリス人、イタリア人、タイ人… と国籍も様々。

夫は、出会った頃から「僕の友達は全員コノミに紹介したい!」というタイプで誰と会うにも連れて行ってくれるので、妻のた私もちゃっかりその恩恵を受けている。

彼らから学ぶことは多い。

共通するのは、みんなバイタリティに溢れているという点だ。ノンが見事にALTの仕事を獲得したのも、夫は自分が紹介したおかげだと鼻息を荒くしていたが、ノン自身が行動したからに他ならない。

そして見返りを求めず他人に与え続ける夫のギブ精神には本当に感心する。私にはとても真似できない。

 

意思あるところに道は開ける。

今後も夫が日本で広げるコミュニティの輪に乞うご期待。

フィリピン人夫がちょっとした隙に友達を作ってくるんです。 金曜日の朝はちょっと楽しみ。 夫の仕事が休みなので、私の出勤時に駅の改札まで見送ってくれるのだ。 娘のお世話もほぼ丸投げして、余...