フィリピンに恋して。
~フィリピン・バギオのリアルライフ~
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100ペソのパイナップルについて思うこと。

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コロナ禍で遠距離の状態が続いている夫とは、毎日のビデオコールでその日の出来事をシェアしている。

昨日は、夫が「元エンジニアの同僚」の話をしてきた。

 

その同僚(以下「D」)は59歳にしてコロナで職を失い、最近夫と同じ職場で働き始めた。

昨日、二人は仕事に必要な書類を取りに市役所へ。

夫が、ガソリン代節約のためにジプニーを使おうと言うと、「車で行きたい」と言うD。

高齢者(フィリピンで59歳は高齢者の部類に入るらしい)に長時間坂道を歩かせるのも気が引けた夫は、自分の車に彼を乗せていくことを快諾した。

300ペソのガソリン代を半分ずつ出す話で、ガソリンスタンドへ行った。

ところが、いざガソリンをいれて支払いというとき、Dは財布に100ペソしかないと言ってきた。

ないものは仕方がないので、その場はDが100ペソ、残りの200ペソを夫が支払った。

道中でいろんな話をするうちに(たぶんこの間にDの家庭の事情やなんかを聞いたんだろう)同情した夫は、車でDを家まで送っていくことにした。

途中、Dが「家族にパイナップルを買いたい」というので夫が出してあげたらしい。

100ペソ(約220円)だった。

Dの家に到着すると、奥さんと4人の子がいた。一番下の息子は23歳。奥さんは専業主婦で、4人の子のうち家にいる3人は、誰も働いていないという。

フィリピンは、学歴・職歴が物を言う世界。とりあえず、エンジニアだと言えばちやほやされるらしい。(いつだったか夫の友達と何人かで飲んだときには、エンジニアの友達はひたすら自分がエンジニアだということをアピールしまくっていた)

Dは、59歳にしてコロナでエンジニア職を失い、今の職場に転職。

一連の話の中で、夫は、その同僚のことを「彼は可哀想だ」と言った。

 

その話を聞いて「人助けをしたあなたを誇りに思うよ」って言ってあげたらよかったんだと思う。

でも、最初に私の口を突いて出た言葉は「その状況でパイナップルを買うなんて、賢くない。どうせ他人のお金を使うなら、同じ100ペソでカレンデリアでおかずとご飯が買えるのに」だった。

言っている最中からすでに「自分はなんて冷たい人間なんだろう」と、悲しくなってしまった。

たかが100ペソ。されど100ペソ。

いや、金額の話じゃなくてさ。50ペソでも100ペソでも500ペソでもいいんだけど。

そして、「返ってくるお金」ならいいんだけど。

フィリピン。貸したお金が確実に返ってこない世界。

夫にだって家族がいる。決して余裕のある生活をしているわけじゃないのに。

自分が働いたお金で、困っている人に栄養のあるご飯を買ってあげるならまだしも、そこで100ペソを出してパイナップルを買ってあげたことが私にはどうも納得がいかなかった。

 

夫はいつも、損得考えずに人助けをする。

小さい頃は、自分の買ってもらったお菓子を人に配ってしまって、自分はひとつも食べられないタイプの子どもだったらしい。

コロナ禍で同棲していたときには、市から配られたわずかな配給を、私たちよりシンプルな生活をしている近所の家族にあげていた。

ついこの間は、彼が選考落ちした日系企業(受かれば就労ビザで日本に来られる)を受けるという友人に熱心にアドバイスをして(面接ではこれは言うなetc.)、アドバイスを受けた友人は見事選考を突破し、夫よりも先に日本行きのチケットを手にした。

そんな夫の周りには、いつも友達が沢山いる。きっと、そうした彼の人となりに共感して自然とついてきた仲間なんだと思う。

 

フィリピンでの人助け(とくに金銭絡み)は、日本人の間でいつも賛否が分かれるテーマでもある。

いろんな意見があるだろうけど、私は夫のそんな一面が大好きだし、尊敬する部分でもある。

不器用で、自分が損をすることも多いけど、目の前に困った人がいれば躊躇なく手を差し伸べる。私には出来ないことだ。

私は、まだまだ損得勘定が行動のベースにあることに気付かされた。

たった100ペソのパイナップル。ポンッと買ってあげたらいいじゃないか、と思う。

だけど、同じ状況でDにそれを買いたいからお金を貸してくれないかと言われたら、きっと快くお金を出せないだろう。

「パイナップルよりおかずとご飯を買う方が合理的」
「お金貸してっていうけど、返ってこないんだろうなあ」
「癖になったら面倒だな」

そんなことを頭がよぎるのはやっぱり「日本的」思考なんだろうか。それとも私のパーソナリティの問題か。

フィリピンではみんな助け合って生きているのに、私がフィリピンという国を中途半端に知っているが故に、いつも「人助け」をする前に踏みとどまってしまう。

考える必要のないことを考えてしまうのだ。

 

画面越しに私が面白くない顔をしていたのに気が付いたのか、どことなく寂しそうな表情を見せる夫。

やっぱりあの時は、一番身近なパートナーとして「あなたの行動を誇りに思うよ」って言ってあげられたらよかったなあ。

だけど、あれがあの時の正直なリアクションだったのも事実。

電話を切った後もモヤモヤ。

一晩寝てもモヤモヤ。

夫の大好きな部分を、尊敬する部分を、心から肯定してあげられなかったこと。

きっとフィリピンで彼と一緒にいた時の私なら、自然にそれが出来ていたと思う。日本に来て、彼と離れて、元の私に戻ってしまった。

こんなことで考え込んでしまうほどには、心に余裕がないってことだ(元々いろんなことを深く考えてしまう性格ではあるけれど)。

早く彼と一緒になって、良い意味で彼のマインドに影響を受けたい。