フィリピンに恋して。
~フィリピン・バギオのリアルライフ~
国際恋愛

【サイドストーリー】日本人をタクシーに乗せたら人生変わっちゃった話。

三ヶ月前に私と彼が出逢った日のことを記事にしたところ、予想以上に多くの反応をいただいた。

バギオでタクシー運転手をランチに誘ったら人生変わっちゃった話。 出逢い 2018年12月16日。 その日はよく晴れた日曜日で、私は友人とランチへ出掛けるため、語学学校の校門の前でジプニーを待っ...

自分に宛てた備忘録だったので細かな感情の描写まで入った長い記事だったにも関わらず、沢山の人の目に触れ、何かを感じてもらい、そしてそれを直接伝えてくれた方もいて、あたたかい気持ちになった。

 

彼と出逢ったあの日、

本当はジプニーに乗りたかったのに渋々タクシーに乗ったこと

最初は彼のことを「自分大好きおしゃべりフィリピン人」としか思っていなかったこと

好意を抱き始めてからも長い間警戒していたこと

ひとつひとつを思い出しては懐かしくなり、またそれを言葉にすることで思い出として形に残すことができて、本来あまりこういうプライベートな内容は書かない方がいいと思ってはいたのだけど、書いてみてよかったなーと思う。

 

そんな中でふと思った。

私と出逢ったあの日、彼は何を見て、何を感じたのだろう?

 

そこで今回は、私が記事にした「あの日」の出来事を 彼目線で、彼自身に 書いてもらった。

本当は彼の英文をそのまま載せたかったのだけど、わざわざ書いてもらったのでより多くの方に読んでもらいたいと思い、日本語訳をさせてもらった。

私の視点では描けなかった、もうひとつのサイドストーリー。

日本人をタクシーに乗せたら人生変わっちゃった話。

2018年12月16日。

僕は実家から遠く離れた地方での仕事から帰ってきていた。

その日は何故だか、長年付き合った恋人と別れ人生の再スタートを切ったかのような清々しい気持ちで、何でもできる気がした。

毎週日曜日は、たくさんの人がミサのため教会を訪れる。

軽く朝食を済ませたあと、僕は思いつきでタクシーを運転して教会に行くお客さんを無料で乗せてあげることにした。

タクシードライバーの制服である襟付きの赤いシャツは洗濯に出していたから、カジュアルな服を着てね。

 

 

タクシードライバーは孤独だ。

だから、街中をを走り回ってはお客さんを拾い、タイミングを見計らって話しかける。

天気の話や、今朝あったトラブル、会話のきっかけになるような小さなことならなんだっていい。

だからタクシードライバーは基本おしゃべり。一日中黙って運転しているのは退屈だから、とにかく話し相手がほしいんだ。

大学二年のときから7年間、学業の傍らアルバイトでタクシーを運転していたから、その気持ちはよくわかる。

僕の運転するタクシーは、亡くなったおじいちゃんから譲り受けた「PAPA LAKAY」号だ。

 

 

個人的な話はこれくらいにして、ここからは「あの日」の出来事についてお話ししたい。

昼休憩の一時間前、僕は空腹を抑えて、休憩前にもう一組だけ乗客を見つけようと車を走らせていた。

なんとなくいつもとはルートを変えて、タカイ・ロードにある語学学校の前を通ることにしたのだけど、まさかこの選択が後に僕の人生に大きな影響を与えることになるとは、この時は想像すらしなかった。

 

 

二人の女の子が必至な形相で激しく手を振っているのが見える。どうやら長い時間タクシーを待っていた様子だ。

警察署の近くでUターンして、彼女たちを乗せた。

ひと目見て外国人だと分かったので、英語で話しかけてみた。すると、二人はその語学学校の生徒だった。

 

行き先はレストラン「Good Taste」だというので、その方面へ向かう。

車を走らせながら、バギオに来てどのくらいになるのかと聞くと、二人は二週間と答えた。

 

その時、頭の中で “お小遣い稼ぎのチャンスだ” と、内なる声がした。

(僕の心の声じゃないよ、他人の声だ。)

「二週間?それじゃあまだバギオに来たばかりなんだね。せっかくだから観光したら?僕がドライバー兼ツアーガイド兼カメラマンになるよ」と言ってみた。

残念ながら二人は乗り気ではなく「いや、観光はいらない。お腹が空いてるから早く何か食べたい」と答えた。がっかりだ。

まあ、タクシードライバーは本業ではないし、いいだろう。

営業はそこまでにして、名前と出身地を聞いた。

二人は日本から来たと言った。アニメと忍者の国、日本だ。

その後、僕はバギオの歴史や気候、人々、おすすめのレストランや観光地のことなど、たくさん話をした。

大好きな街であり育った場所でもあるから、その魅力は最大限に伝えておかないとね。

 

 

パルマ・ウルバノ通りを下って、目的地「Good Taste」に到着した。

いつもどおり家族連れが店の外まで長い列を作り、警備員がせっせと列整理をしている。

「日曜の昼時だから、これが普通だよ」と言うと、

運転席の後ろに座っていた子が、「他においしいレストラン知らない?」と聞いてきた。

それなら、と僕は彼女たちを「Canto」に連れて行った。バーナム・パーク近くのビストロだ。ファンシーな店なので僕は行ったことがないけど、何度か外国人を乗せたことがある。

レストランへと車を走らせる間、さっきと同じ女の子が「よかったら一緒にランチしない?」と誘ってきた。

朝食にコーヒーとパンデサルを食べたきりだ。

なんだか面白そうなので、一緒に昼食をとることにした。

 

 

Cantoに到着。

僕は道路の脇に車を停め、タクシーから降りた。その時、初めてさっきまで話していた二人の姿がよく見えた。

一人は白い無地のシャツに細いレギンス、白いフィラのラバーシューズ姿。

僕をランチに誘ったもう一人の方は、オーバーサイズの汚れた白いシャツにカラフルな柄物のレギンス、O型のピアス、黄色いハワイアナスのサンダルを履いていた。

タクシー運転手だから、乗客の名前や特徴は細かく覚えてるよ。それが次の仕事に繋がることもあるからね。

 

そこもまた混雑はしていたけど、僕たちは並んで待つことにした。

待っている間もお互い色々な話をしたけど、内容は覚えてない。

そのうち席に通された。

食べ物を注文し、今度は僕自身の仕事について話した。

普段は公務員として、ここから6時間ほどのアブラ州というところに常駐している。

田舎ではなかなか仕事がないから、現地の人々にビジネスを提供し、彼らが生活を維持できるよう指導する。大変だけど、やりがいのある仕事だ。

遠く離れた場所への移動はアクセスが難しいけど、その景色は言葉にできないほど素晴らしい。僕は二人に写真を見せながら話を続けた。

一方で彼女たちは、海外旅行へ出掛けるのに現地でのコミュニケーションに困らないよう、ここバギオで英語を勉強しているのだと話してくれた。

 

 

食事を終えた後、彼女たちは、まだタクシー代を払っていないので僕の昼食代を払うと言ってきた。

一度は断ったが、二人がどうしてもと言うので、僕は代案として「じゃあこうしよう。ここは君たちが払って。そしたら今日のタクシー代はどこまで行っても無料でいいよ」と言った。

交渉成立。記憶している限り会計はかなり高かったけど、僕は100ペソしか払わなかった。

まあ、二人はデザートまでフルコースで頼んでたし、いいよね。

ここだけの話、あの店で食べたのは初めてだったけど、豪華すぎてなんだか落ち着かないしお腹もいっぱいにならず、僕にはイマイチだった。

やっぱりカレンデリアが一番だ。

豪華な料理を食べるよりも安い飯で腹を満たすのがイゴロット流。

僕たちは店を後にすると、タクシーを背景に写真を撮り、連絡先を交換した。

 

 

「次はどこへ行く?」と尋ねると、「美容院に行きたい」と、iPhoneに入っていた写真を見せられた。

マハルリカだ。従業員のほとんどがゲイで、男の場合は気に入られると連絡先を聞かれたり、バックヤードに連れて行かれて身体を触られそうになる、あのマハルリカだ。

僕は「本当にそこで髪を切るつもり?」と聞き返した。女性でもあそこはやめたほうがいい。

代わりに評判の良いヘアサロンへ連れて行った。ナギリアン・ロード沿いにある美容院だ。

 

 

最初に彼女たちを乗せたときは、バギオ観光と称してお小遣い稼ぎでもするか、と下心すら抱いていたのに(こういうことを言ってくる親切でフレンドリーなタクシードライバーには要注意)

もうそんな気持ちは微塵もなく、僕は最後まで彼女たちに支払いを要求しなかった。

長年タクシードライバーをやってるけど、こんなの初めてだ。

彼女たちは、「乗客」から「友達」になったのだ。

 

―それが「あの日」の話。

 

 

僕に「一緒にランチしない?」と声をかけた日本人女性は、今、僕と一緒に暮らしている。

あの日、彼女たちは、本来ジプニーを待っていたのだが5台のジプニーに抜かれてしまい、仕方なくタクシーに乗ることにしたのだそうだ。その時のタクシー運転手が僕だった、というわけ。

そしてこの話にはもうひとつ、まるで作り話のようなストーリーがある。

 

2017年12月16日。

長年の彼女との別れで傷心中だった僕は、自分へのけじめとして「いつか運命の人に出会う」という意味が込められたタトゥーを入れた。

そのちょうど一年後の2018年12月16日、彼女が僕のタクシーに乗ってきたのだ。

この事実に気が付いたのは交際開始から半年、フィリピンと日本間で遠距離恋愛の真っ最中、二人の写真を何気なく見返していたときだった。

 

 

彼女と一緒になってからも、PAPA LAKAY号で週末に夕飯を食べに出掛けたり、バレルへ家族旅行に行ったりしたけど、そのうちおばあちゃんがタクシーを誰かに売った。

思い出の詰まったタクシーとの別れは寂しいけど、家族が決めたことだから仕方がない。

彼女と出逢うキッカケをくれたおじいちゃんとPAPA LAKAY号に感謝を込めて。

【解説】

この記事を執筆するにあたって、私は彼に記事を書いてほしいとお願いをしたっきり、構成などはすべて彼まかせにしてみた。

その結果、面白いことに同じ日の同じ時間を同じ場所で過ごしたにも関わらず、見事にお互い認識している事実が違う/切り取って記憶に残している部分が違う ということが明らかになった。(笑)

今回は、あえてそういった箇所もつじつま合わせをせず、そのまま翻訳してみた。

双方の内容をリンクさせてきれいなストーリーに仕立て上げることよりも、彼があの日の出来事をどう記憶しているかを一番大切にしたかったから。

 

例えば私たちがタクシーに乗り込んだ場面。

彼は、私たちが外国人だと分かった時点で「これは小銭を稼ぐチャンスだ」と下心丸出しで「カメラマン付き・バギオ観光ツアー」を提案し、「いや、お腹空いてるだけだからそういうのいらない」と、あっさりと断られている。

このやり取り、私の記憶にはまったくないのだ。

 

それからレストラン「Canto」でのお会計の場面。

昼食代を払わせてほしいと私たちの方からお願いし、一度は断ったけどどうしてもというので仕方なく払ってもらった、その代わりタクシー代を無料にした

というニュアンスで書かれているのにはさすがに笑ったw

私の記憶が正しければ、ここは彼の方から「じゃあ僕は100ペソ払うよ。その代わりタクシー代はいらないから。いい?」と気持ちいいほどにさらっと交渉してきた、というのが事実になる(笑)そういうちゃっかりしたところも彼の魅力なんだけどね。

お互い、都合の良いように記憶をすり替えてるんだなあw

 

 

出逢った当初は、片や相手のことを強盗かと疑い、片や相手にエクストラマネーを請求しようとした二人が今では一緒に住んでいるという、世にも不思議な物語。

今、隣にパートナーがいる方は、出逢った日のことを思い出して話してみてはどうだろう。意外とお互いの記憶している事実が一致しないかもしれない(笑)