フィリピンに恋して。
~フィリピン・バギオのリアルライフ~
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バギオでタクシー運転手をランチに誘ったら人生変わっちゃった話。

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出逢い

2018年12月16日。

その日はよく晴れた日曜日で、私は友人とランチへ出掛けるため、語学学校の校門の前でジプニーを待っていた。

且つては憧れだったジプニーも、もう慣れたもの。

バギオのタクシー料金は日本に比べれば破格だけど(当時 初乗り35ペソ)、ジプニーの運賃はタクシーの4分の1以下(当時 8.5ペソ)。フィリピンに来て早々お金を使い込んでいた私たちは、なにがなんでもジプニーに乗りたかった。

 

待つこと2,3分。遠くにジプニーが見えた。

勢いよく手を挙げる。

運転手、こちらをチラ見してスルー。

フィリピンでジプニーにスルーされるのは、満席か昼休憩、もしくはコーディング。

ちょうど昼時だし、ランチブレイクか?

 

もう5分待って二台目のジプニーにアプローチするも、またもやスルー。

空席は沢山ある。

 

もう一台、もう一台。

その日は何故だか、まるで私たちの姿が見えていないかのように全ジプニーがことごとく私たちをスルーしていった。

いつもならすぐに捕まるのに、こんなの初めてだ。

そんなことよりお腹が空いた。早く街に行きたい。

 

かれこれ30分程ジプニーに乗れずにいた。

いい加減しびれを切らした私たちは、次のジプニーが止まってくれなかったらタクシーに乗ろう と決めた。

 

そして待つこと5分。

五台目のジプニー、あっさりとスルー。

・・・

本当に不思議だった。

 

そしてそのジプニーに続くように現れた、一台のタクシー。

このタクシーこそが後に私の人生を大きく変えることになろうとは、この時は予想だにしなかったのだけれど。

レストランに連れてって!

空腹も限界に達していた私たち。そのタイミングで現れたタクシードライバーが神に見えた。

サラマッポ!サラマッポ!と言いながら勢いよくタクシーに乗り込む。

 

ドライバーは同年代くらいに見えた。

私たちの目的地は、学校の先生におすすめされた人気レストラン「Good Taste」。

「Good Tasteに行きたいんだけど。知ってる?」と聞くと

「Of course! 僕は17の時からタクシードライバーだ。バギオのことなら何だって知ってるよ」

 

ドライバーはとにかくおしゃべりで、すぐに仲良くなった。

10分程でGood Tasteに到着。

が、日曜の昼時。ピークの時間帯だったこともあって大行列だった。

すると、ドライバーが機転をきかせて「もう一つ観光客に人気のレストランを知ってるからそこに連れて行くよ」と。

Good Taste が本当に Good Taste なのか確かめられないのは残念だけど、バギオの土地勘もなければ特にこだわりもないので、言われるがまま連れて行かれることにした。

 

車を走らせている間、

「ここは〇〇っていう地元民に人気のローカルレストランで、僕も友達と飲んだあとはいつもここに行くんだ」とか

「この通りは▲年前の洪水で大被害を受けたところだ。僕の実家は・・・」とか

とにかくバギオという街について自分のエピソードを交えてひたすらしゃべり続けていて

とりあえず、バギオが大好きな人なんだなーということは分かった。

 

それから、

私「ご飯食べた?」

ドライバー「まだだよ」

私「お腹空かないの?」

ド「ぺこぺこだよ」

私「じゃあ一緒に食べようよw」

ド「いいの?」

私「えっ 逆にいいの?昼休み何時から?(べつに本気で誘ったわけじゃないんだが)

ド「Anytime」

 

昼休み、Anytime 。

そうか、ここはフィリピンだった。

決められた時間に決められた場所で昼食をとるというのは、日本のルール。

業務中に客とランチに行くというのは、少なくとも私が生まれ育った日本という国では一般的ではなかったので、まさか誘いを快諾されるとは思っていなかった。

でもなんか面白そうだしいいか。

そんな流れで急遽、私と友人とドライバーとでランチをすることになった。

おしゃべりドライバー

着いた場所は、観光客で賑わうレストラン「Canto」。

そこもどうやら人気店らしく何組か待っていたけど、せっかくなので並ぶことにした。

待っている間、ドライバーが小さい頃から日本のアニメを見て育ったこと、大好きだったおじいちゃんの話、元カノと別れた原因、夢はオスロブに行ってジンベイザメと泳ぐことだ、といった話を聞いた。

ひたすら聞いた。

まあよく喋る人だった。

30分前に出逢った人の生い立ち、家族構成、経歴、前職と現職の給料、将来の夢、元カノ、亡くなったおじいちゃんとの関係までもを把握。

たぶん30分くらいは待っていたのだけど、ひたすら彼の話を聞いていたせいか待ち時間も長くは感じず、そのうち席に通された。

 

料理が運ばれてくるのを待つ間も、さらに食べている間も、ドライバーがとにかく食べることが大好きだ、料理も大好きだ、白飯は最高だ、白飯なしでは生きていけない、といった話を聞いた。

ひたすら聞いた。

口から生まれたようによく喋る人だ。

白飯が好きすぎてドライバーがおかわりしてたことは、なぜか一年たった今でも覚えてるけど、彼のマシンガントークに圧倒されて、料理の味はまったく覚えていない。

PAPA LAKAY号

バギオのタクシーには、一台一台オーナーによってつけられた名前がある。

彼の運転するタクシーの名前は「PAPA LAKAY」号。(=タガログ語で”Old Father”)

PAPA LAKAYは、去年亡くなった彼のおじいちゃんのニックネームだそうだ。元はこのタクシーのオーナーだったらしい。

彼は、10代の頃から学校に通う傍ら週末にはおじいちゃんのタクシーを借りてお小遣い稼ぎをしていて、

今現在、普段は地方で別の仕事をしながら、休暇でバギオの実家に戻ってきたときにはタクシーを運転しておじいちゃんを思い出しているんだと話してくれた。

ドライバーから友達へ

食事を終えた私たちの次なる目的地は美容院。

学校の先生におすすめされた美容院(Maharlika)に行きたいと伝えると、「そこは日曜は激混みだから絶対にやめたほうがいい、もっといいところに連れて行くよ」と、半ば強引に目的地の変更を勧めてきた。

(一方的だなおいw)

まあ特にこだわりもなかったので、言われるがまま連れていかれることにした(二回目)。

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どこかのタイミングで連絡先を交換した。

当時SIMカードを使っていなかったので、Wifiがないとインターネットが使えない。

Instagramのアカウント名を聞いて「帰ったらDMするね」と言って別れ、学校の寮に帰って「今日はありがとう」とメッセ―ジを送ると、すぐに返信がきた。

疑いの始まり

彼のステータスは「ドライバー」から「友達」に変わった。

以前から、計画を立てずに海外に行っては現地で友達を作って案内してもらう、といったフリースタイルの旅行が好きだった私は、フィリピン人の友達ができたことが嬉しかった。

 

彼はバギオでの休暇を終えて、また出張先のアブラ州に戻っていったけど、現地の綺麗な景色やなんかの写真も頻繁に送られてきた。

ドライバーだし、仲良くなったら色んなとこ連れてってくれるかもな…フフフ、と下心を抱きつつも、身に危険があるといけないのでここは慎重に。

 

ふと、あの日、記念写真撮ろう~といってレストランの前で撮ったセルフィ―を見返していて、私はあることに気が付いた。

こちらが問題の写真。

 

バギオのタクシードライバーは、通常赤いシャツを着用することになっている。

彼は赤いシャツを着ていなかった。

おかしい。

疑いのフィルターをかけてまじまじと見てみると、タクシー運転手にしては身なりや顔立ちがやんちゃに見えなくもない。

フィリピンのタクシードライバーはおしゃべりでフレンドリーというネットの情報はよく目にするけど、私の経験上、バギオのタクシードライバーは物静かで地味な人が多く、あんなにペラペラと喋るのは彼だけだった。

 

見れば見るほど、ドライバーのことが怪しく思えてきて、妄想も次第に膨らんでいった。

もしかして、この男は強盗か何かで、これは盗難車なのでは?

フィリピンならあり得る・・・
(注:当時の私はフィリピンのことを何も知らない)

一度そう思ったら、もうこの男のことが強盗にしか見えなくなってきた。

 

そう考えれば、亡くなったおじいちゃんの話も「PAPA LAKAY」号の話も、なんだか胡散臭いぞ。

美談を装った巧妙な作り話か?

 

私は日本人。深く関われば、お金をふんだくられるかもしれない。いや、お金だけで済めば良い、命だけは守らなければ。

 

それが、私とドライバーの出逢いだった。

ドライバーの正体

あれからちょうど一年。

バギオ留学後、ワーキングホリデーに行く予定だったオーストラリア行きをキャンセルし、なぜかまたバギオに戻ってきた私。

そしてあの時のドライバーはというと・・・

 

今、私がブログを書いている隣でせっせとコンピューターゲームに励んでいる。

「ドライバー」から「友達」へと昇格した彼のステータスは、今では「恋人」になったのだ。

裏話

私が彼のタクシーに乗客として乗りランチをした日からちょうど一週間後に、語学学校の友人総勢10人と<クリスマス旅行 in サンファン>を予定していた。

ところが、いざ長距離バスのターミナルにサンファン行きチケットを買いに行くと、ピークシーズンにつき事前予約不可。

クヤ
クヤ
チケットは当日の朝4時から販売開始だ。先着順だよ

助けてもらうつもりはさらさらなかったけど、たまたまメッセージのやり取りをしていた彼にその出来事を話すと、「特に予定ないからドライバーとして車出してあげるよ」と言ってくれたので、

「せっかくならドライバーじゃなくて友達として参加すれば?」と私から声をかけ、クリスマス旅行に飛び入り参加することに。

それがキッカケで仲良くなり、交際に発展。

私はその2ヶ月後に日本に帰国し、「とりあえず両親に会ってみなよ、話はそれから」と、短期滞在ビザで2019年4月に彼を日本の実家に招待した。

【短期滞在ビザ】フィリピン人の恋人を日本に招待する方法【写真付き解説】 コロナ禍で遠距離恋愛しているみなさん、お元気ですか? 私たち二人も、コロナウイルスによって離れ離れになったカップルのうちの一組です...

 

そのあとは、私がバギオへ一度短期渡航、そして今回の長期滞在、という運び。

 

 

彼の名誉のために一応補足しておくと、彼は強盗ではないし、勿論タクシーは盗難車ではなく、正真正銘おじいちゃんの所有物。

知り合ってしばらくしてから、指定の赤いシャツを着ていなかった理由 について聞いてみると、返ってきた答えは

「その日が日曜日だったから」。

毎週日曜日は<洗濯日>として、赤シャツを着なくてもいいらしい(笑)

ちなみに私は彼に好意を抱き始めてからもしばらくは彼のことを疑っていたので(外国人だからね。自己防衛、大切。)、この話を信じるまで二週に渡って日曜日に街に出てはタクシーの窓から中を覗き込みドライバーの服装をチェックしたけど、本当に赤シャツを着ていないドライバーを何人も見た。

 

当時はとてつもなく胡散臭く感じていたおじいちゃんの話も全て真実。 (失礼すぎる)

真顔で彼に「あなたは強盗か何か?」と質問をしたのも、今では家族中が知る笑い話になった。

 

 

これが、タクシー運転手をランチに誘ったら人生変わっちゃった話

後日彼にお願いして書いてもらった、サイドストーリー「日本人をタクシーに乗せたら人生変わっちゃった話」はこちらから。

【サイドストーリー】日本人をタクシーに乗せたら人生変わっちゃった話。 三ヶ月前に私と彼が出逢った日のことを記事にしたところ、予想以上に多くの反応をいただきました。 https://knm-pinas....

バギオで平凡な人生を送るはずが、あの日うっかり私を乗せたばっかりにジェットコースターのような人生に巻き込まれてしまって、、、いい迷惑だろうなあ(笑)

 

今でも時々思い出しては彼と話すけど、

あの日、5台のジプニーのうちどれかが止まってくれていたら?

あの日、彼が既に他のお客さんを乗せていたら?

一つでも違っていたら、二人は今一緒にいないよね。

そう考えると、運命っていうのはつくづく面白いなって思う。

あの日、餓死寸前の私たちをなぜか華麗にスルーしてくれた5人のジプニー運転手には心から感謝。

 

 

現在、PAPA LAKAY号は別のオーナーの元へ渡り、今もバギオのどこかを走っている。